ジュリアン・ドール

ミサに話のきっかけをつくってもらったジョウは、いざ呼吸を整え話し始めた。


「はい、実は、俺・・・・・いや、私は・・・、来春にでも正式に祖父の店を継ごうと思っているんです。

・・・・・店の内装もすべて新しくして、あの店を自分なりに運営していくつもりなのですが・・・・・」

「ほう・・・・・。そうかそれは素晴らしい!」


サロンは、まるで自分の事のように喜びの笑顔を見せた。


「まだ先の話なのですが、そろそろ自分にも自信がもてるようになって、そうしてもいい時期なのではと、この頃になって思うようになったんですが・・・・・」

「そうか、そうだな。君ならできるだろう頑張ってくれたまえ」


ジョウの決心に、笑顔で激励の言葉をくれたサロンの優しさに、ジョウは深々と頭を下げ、礼を言う。


「ありがとうございます」


そしてジョウは、大きく息を吸い込み、その息を吐く勢いに任せるように打ち明けた。


「そうしたら、ミサ…さんも一緒に暮らしたいと思っているのですが・・・・・、今日はそのお許しを頂きたかったのです!」


サロンの笑顔は一瞬にして真顔になった。


「自分のような身分の者が、こんな事を言うのも恥ずかしい事ですが、私は何の地位も名誉もない、ただの人形店の店員で、しかし、今までのような贅沢はさせられないかもしれませんが、不自由な生活をさせないようにする自信だけは持てるようになりました。

そして何より・・・・・私はミサさんを誰よりも愛していますし、ミサさんも私を愛してくれています。

先程、馬車の中で私は、彼女を一生大切に、幸せにしてあげると誓いました。ですからサロン様が許して下さるならば……、彼女をクリスト家に迎えたいと思っています」



ジョウは、真っ直ぐに曇り無い眸で、サロンの目を見つめていた。


ミサには、今迄にも見た事のないほどに、この瞬間のジョウが男らしく見え、グッと胸に込み上げる熱い感動を覚えていた。