『ミサ・・・・・、いつもそんな事を思っていたのか?』



それを聞いて思わずジョウは、ミサの寂しそうな双眸と目を合わせた。


ミサの闇色の瞳は、ジョウが傍にいると言うのに、余りにも寂しさを感じさせていたが、ミサはすぐに我に戻り、強がってしまう。


『なんて・・・、冗談よ、冗談。・・・でも、時々、そんな事も・・・・・・少しは思った事もあったかな・・・・・・?

でも、ほんのちょっとだけよ。それにお人形が人間になるなんて、昔の人の作り話よ、そんな事気にしてどうするのよ!』


ミサは言ってはいけない事を言ってしまったような気がして、自分の言葉を掻き消すように慌てていた。


日頃人形を見つめる事は、ジョウにとっては仕事をする上での大切な事。それに文句を言うのは、ただの我が儘でしか無いのだから。


しかし、ジョウにはミサが無理に繕っている事がすぐにわかった。



『そんな事、気付きもしなかったよ、ごめん・・・。君の前ではもっと気を使うんだったね。でも、あれは仕事の為にやっている事なんだ。あれを見ていると、いろんな人形を作るイメージが出来上がるんだよ。だから・・・・・』

『わかってるわ、ジョウ。今のはただの私の我が儘だもの。私はジョウがお人形を作っている真剣な姿を見ているのが大好きだから、今まで通りでいて欲しいのも本心だし、仕方がないわ』



ミサはにっこりと微笑んで見せた。


ミサの健気な愛は、今度もジョウを感動させてしまい、またもやジョウは、ミサを抱き締めずにはいられなくなる。


『心配しないでミサ、俺が心から愛しているのは、一生を賭けてもミサ一人だけなのだから』


普段は口数の少ないジョウから心を打ち明けられた時は、いつも胸が熱くなる。


無事に婚約が出来たこの日は特に・・・・・二人にとっては特別な日だから・・・・・。