サロンは昼間の事件で怪我を負わせてしまった娘の事が気になって、様子をうかがった。


「妹さんの怪我は大丈夫でしたか？」

「はい、今は大事をとって部屋で安静にさせています。お財布の中に使わせて頂いた分の領収書を入れておきました。本当に助かりました。ありがとうございます」

「いやいや、本当に悪いのはこちらなのだから。それにしても、この分だと大怪我では無かったようだから、本当に良かった。安心した」



サロンは首を何度も何度も頷かせながら、本当に安堵した様子を見せていた。



「ところで、そちらのご危篤とおっしゃってたお嬢様のご容態は･････」



ハーリーも、あの時の様子を思い出し、サロンを心配したが、そのことに話題を振られると、サロンは何故か半分顔を引きつらせて笑いだした。


「あは、はははは･････は」



今朝娘が危篤だと言って慌てていた主人が、その夜は娘と楽しげにダンスに夢中になって踊っているって･･･。何故か、ハーリーまでもが釣られ笑いをしてしまう。



「はははは、ははは･･････はは･･････」



（まさか、あの時の旦那が、我が妹の生まれ変わりの娘の父親だったとは思ってもいなかったが、先程ちょっとだけミサの運命を覗き見した時、ミサは一人娘だったはず･･････）

ハーリーの笑いは苦笑に変わっていった。


（エルミラーラの奴、大した事のないような用事で、忙しい父親に嘘をついて心配させていたんだな。昔、よくその手で私も父上も騙されていた、あいつのやりそうな事だ。生まれ変わってもそういうところは変らないんだな）


ハーリーは、笑いながら心の内でそんな事を考えていた。本当だったら兄として、思いっきり叱りつけてやりたい気分だった。


「いや何？うちの娘は我が儘で甘えっ子で、困っておるんだ。ほんのちょっと貧血を起こしただけで使いの者をよこし、大げさな事を言って私を驚かせてくれる。ジョウ君もこれから先が思いやられるな･････。スマナイ」

「いえいえ、ご無事で何よりでした･･･」



そして、サロンの笑いが変わって豪快な笑いになる。