「貴方様は、お昼の馬車の・・・・・?」
しかし、サロンはハーリーのことはまったく覚えていない。
「え、君は?」
正直言ってハーリーの方も、交差点の事故の時は殆どジュリアンに気を取られていて、余りじっくりと相手の顔を見ていなかった為、はっきりとした自信がなかった。また、サロンの方もあの時は慌てていたせいか、聞いてみても、ハーリーの事は覚えていないようだ。
声はあの時の声によく似ているから、多分間違いないと思い、ハーリーは、自分自身やってはいけない事と、日頃心得として思っている筈の、前世から受け継いでしまった例の力を使って、ほんの数時間前の出来事だけを覗こうと思った。
普段ならば、人のプライバシーにかかわる事なので、勝手に相手の運命の全てを覗き見するつもりは無かったのだが、あの主人からはサイフを丸ごと預かっていたから。
ハーリーは、サロンの眸を見つめ、その奥に見えてくる運命を、ほんの半日程、時間を逆登って見てみると・・・・・、あの時間の出来事がはっきりと見えてきて、サロンがその時の主人だったと確信できた。
「ああやっぱりそうだ、貴方でした」
「何の事かね?」
サロンは、ハーリーの言っている意味がさっぱり分からなくて、戸惑いながら聞き返した。
分からなくても無理はないだろう。ハーリーは、昼は白いブラウスにジーパンと、いった格好で、髪まで寝起きのままのボサボサ頭だったのだから。今の、制服である正装姿のハーリーとは、まるで別人のようなものだった。
「明日の朝、ここの勤務が終わったら、これを貴方様に返しに行こうと思っていたのですが・・・・・こんな所でお会いするとは思っていませんでした」
ハーリーは胸の内側のポケットから黒い革の札入れを出し、サロンに差し出した。
サロンは、もともとは自分のものであるそれを見て、ピンとひらめくように思い出た。
「き、君は・・・ 確か、昼間の!」
「はい」
ハーリーは笑顔を作り、礼儀正しくサロンへと頭を下げた。
しかし、サロンはハーリーのことはまったく覚えていない。
「え、君は?」
正直言ってハーリーの方も、交差点の事故の時は殆どジュリアンに気を取られていて、余りじっくりと相手の顔を見ていなかった為、はっきりとした自信がなかった。また、サロンの方もあの時は慌てていたせいか、聞いてみても、ハーリーの事は覚えていないようだ。
声はあの時の声によく似ているから、多分間違いないと思い、ハーリーは、自分自身やってはいけない事と、日頃心得として思っている筈の、前世から受け継いでしまった例の力を使って、ほんの数時間前の出来事だけを覗こうと思った。
普段ならば、人のプライバシーにかかわる事なので、勝手に相手の運命の全てを覗き見するつもりは無かったのだが、あの主人からはサイフを丸ごと預かっていたから。
ハーリーは、サロンの眸を見つめ、その奥に見えてくる運命を、ほんの半日程、時間を逆登って見てみると・・・・・、あの時間の出来事がはっきりと見えてきて、サロンがその時の主人だったと確信できた。
「ああやっぱりそうだ、貴方でした」
「何の事かね?」
サロンは、ハーリーの言っている意味がさっぱり分からなくて、戸惑いながら聞き返した。
分からなくても無理はないだろう。ハーリーは、昼は白いブラウスにジーパンと、いった格好で、髪まで寝起きのままのボサボサ頭だったのだから。今の、制服である正装姿のハーリーとは、まるで別人のようなものだった。
「明日の朝、ここの勤務が終わったら、これを貴方様に返しに行こうと思っていたのですが・・・・・こんな所でお会いするとは思っていませんでした」
ハーリーは胸の内側のポケットから黒い革の札入れを出し、サロンに差し出した。
サロンは、もともとは自分のものであるそれを見て、ピンとひらめくように思い出た。
「き、君は・・・ 確か、昼間の!」
「はい」
ハーリーは笑顔を作り、礼儀正しくサロンへと頭を下げた。

