『うん、美味いよハーリー、これなら私でも飲めるようだ。君の眸に酔っている気分だよ、ジュリアン』

ジョウの中にいるもう一人の自分が、傍らでこちらを見つめている人間の姿のジュリアンに、そんなキザなセリフを言った。


ジョウは、まるでプレイボーイの言いそうな台詞を平気で言っている、もう一人の自分がどうも好きになれない。何でも知っているようなフリをする、あのハーリーの方がまだマシだ、と思った。



『ローレンったら、ハーリーがいる前で恥ずかしいわ。たった一口で、もう酔ってしまったの?』



美しい人間の姿になったジュリアンは、人形の時には見られないような表情で、頬を染めている。



『情けないな、でも、酒に酔うっていうのは、まるで君と二人っきりでいる時のようにクラクラする』



普段は無口な筈のローレンも、酒に酔ったせいか、気持ちが大胆になってきたのか、人目も気にせずに、ジュリアンの肩を抱き寄せた。



『ローレン・・・・・』


ハーリーは、戸惑うジュリアンを見て、意味ありげにクスリと笑った。


突然、ローレンは、何かを思いついたようにハーリーに話しかけた。



『ハーリー、ちょっと、向こうを向いていてくれ』



しかしハーリーは、そのわけが何が何だか分からずに訳を問う。ジュリアンも、ローレンを見つめたまま、首をかしげていた。



『な、なぜ?』

『いいから、ジュリアンと二人きりの気分にさせてくれ』



ローレンがそう言うと、ハーリーは、ははん・・・・・と、ローレンの気持ちを読み取ってか?あえて、それ以上何も聞かず、言う通りに背を向けた。


ローレンは、ジュリアンの眸と同じ色のカクテルを、今度は嘗めると言うより、少し多目に口に含んで、そして、ごっくりと飲み込んだ。酒が彼の喉元を通り過ぎるか過ぎないか、といううちに、酒の酔いはもっと強くローレンの身体を火照らせた。