「どうかされたのですか?」


あいかわらず、ブスッとした顔のジョウに凝りもせず声をかけてみる。


「ああ、今日は気分がさえない」



ジョウは不機嫌な気分のまま応えている。



「そうですか・・・・・。私のピアノ」

「ピ、ピアノが・・・何か?」

「つまらなかったですか?貴方一人だけから拍手を頂けなかったものですから。音楽は余りお好きではなかったでしょうか?」



ハーリーの言葉に、なんの裏も無いのだろうか、ただの考え過ぎだろうか?自分に話しかけるハーリーの表情を探るように、ジョウはハーリーの顔をじっと見つめていた。



「いや・・・・・、とてもいい曲で、私は以前からこの曲は好きだった。生の演奏で聞けて嬉しかったよ」

「以前から?それは不思議だ。これは私のオリジナル曲で、世間には知れていない曲なのですが」

「――え?」(一体、どういう事だ?)

ジョウは、言葉を無くしてしまった。


「どこかで似たような曲でも聴いたのですか?」



ハーリーが微笑みながら先に答えを出してくれたが、ジョウにとって、その琥珀の眸の微笑みがどうも意味ありげに見えてならなかった。



「そ、そうかもしれないな。でも素晴らしい曲だった」

「ありがとうございます」


ジョウは、このカウンターにハーリーと二人きりになっていることで、どうも、気が落ち着かなくなってしまっている。そんな、ジョウの気持ちを察してか、ハーリーも気を使って話しかけている。