『ジュリアン!ローレンはもう昔のローレンではないんだ!お前は、ローレンがどうなってもいいのか?』

『どうなってもいいなんて思ってないわ。だって、彼は昔のことなんか思い出してはいないわ。それなのにあの人は、まるで昔のように、わたしを愛してると言ってくれたのよ』

『ジュリアン、可愛い義妹よ、解ってくれ。彼は、今は一国の王で、エルミラーラという妻がいるんだ。こんな事が知れたら、彼の名誉にかかわる汚名になってしまう』

『何故?わたし、側妃でもいい!だって、彼が本当に愛しているのはわたしだもの。そう、信じていれば、わたしはそれでも耐えられるわ』

『側妃?なにをばかな事を言っているんだ、ジュリアン・・・・・』

『だって、わたし、ずっと寂しかったのよ。いつも独りぼっちで、小さい頃からずっと・・・・・。そしてやっと出会った人なの、ローレンは!

わたしにはあの人しかいないし、あの人もそう、初めて出会った時から感じてたわ。わたしたち二人は出会う為だけに生まれてきたのよ。そうでなければ、こんな寂しい世界に生まれてこなかったもの』


わたしには、痛い程にジュリアンの気持ちが分かる。だから、二人を引き裂くのはなおさらつらい思いだった。しかし、呪縛にかけられたローレンのことを思うと、この儘だと彼は二人の間で心を動かし、そして、気が狂って・・・・・。


いや、もう既に愛し合ってしまったのなら遅いかもしれない。いまさら頑固な彼にジュリアンを忘れろと言っても、私の忠告であっても聞くわけがない。では彼に待っているのは、やはり・・・狂・・・死?!


ああ、私は、どうすればいい?


このままいつかローレンが死んでしまうような事があったら、たぶんジュリアンも死ぬと言い出すに違いないだろう。しかし、私がエルミラーラの悪戯に気付いて、問いただした時、エルミラーラが言ったことは、たぶん本気だ。