『はっ!私めは城に薪を運んでおります者の一人で、申し送れましたが樵のフォルスと申します。うちには可愛い養い子がおりまして、何と言うか、陛下様には大変憧れておりますようで、よく陛下様がここをお通りになる頃には、その曲がり角のところで……』

フォルスがジュリアンが隠れる樹を、すっと指を示すと、ローレンはフォレスが指で示す方を見た。


ジュリアンは、咄嗟に身を隠す事が出来なかった。



『あの娘……』



あれは挙式の時の“黄金色の髪の娘”!


二人は、ローレンの挙式の時以来、七つの月を越えて、初めて視線の向こうに互いを認め合った。


『私は、あの娘を知っている気がする……どこかで会っている』

『陛下様?』

『どこだろう?どこかで……!痛っ!まただ!何かを思い出そうとすると!ぅあぁっ!!』


 ドサッ!


ローレンは、突然やって来た激痛に頭部を抱え、そのまま意識が遠くなり、赤いマントが宙に舞うように落馬した。


『陛下、陛下!』

『きゃあぁ!ローレン!』


ジュリアンの、ただ事ではない悲鳴に、私は驚いて現場に駆けつけた。

『ハーリー、大変!ローレンが!!』


そこには、馬に乗ったフォレスと、馬の足下に倒れているローレン、そして倒れたローレンの傍で膝を着いて泣いているジュリアンがいた。


『ロ、ローレン!どうした!』


私は急いでローレンの様子を見に行った。


さすがに幼い頃からの乗馬の得意なローレンは、落馬の時も頭から落ちる事はなかったが、どうやら肩を強く打ってしまったらしいが、意識はしっかりしていた。


『ロ、ローレン!どうした!』

『ハーリーか・・・・・・っ痛!お前、何でこんな所に?』

『それよりローレン、頭、大丈夫か?』

『頭?どうやら頭より、肩を打ってしまったようだ』

『とにかく、急いで傷を診よう』



そこで声をかけてきたのは、何も知らずに声をかけてきたフォレスだった。馬に跨がった儘、呆気に捕らわれている様子で。

『ハーリー、お前は陛下とお知り合いなのか?』