「実依良い子~」
良いものを見たと言わんばかりに口角を上げる希里。
彼女が席に戻ってから言うべきだったと激しく後悔する。
「うるさい希里」
仏頂面でそう言い、さっさと自分の席に戻って、鞄を持つ。
今日も懲りずに原稿用紙を持ってきたが、当分校内で書くのを止めよう。
まぁ、文化祭の準備も始まるんだし、書く時間なんて無くなったも同然なんだけど。
笹野さんも支度を終えて待っている。
「仕方がないか」と頷いて、私もすぐに教室を出た。
***
そこまでは良かったのだ。
実行委員会では、お化け屋敷を希望のクラスは1クラスだけで、難なく私のクラスに決定した。
翌日のHRで笹野さんが言うと、皆嬉しそうにしていたから、これで手伝ってくれるかもしれないと期待したのが甘かった。
「じゃあ後はよろしくね~」
そう言ってぞろぞろと皆は進学塾やら予備校やらに消えてしまった。


