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「お前、才木に告られたの?」

「はあ?」




才木くんと分かれた後、何故か私は会社に来てしまった。


放課後はいつも、真っ直ぐ家に帰って執筆を始めるのだが、昇降口で先生に捕まってしまった。



「お前の小説、全部読みたいから」




意地悪い笑顔で、車に連れ込まれ、そのまま会社へ。

ここが学校じゃなかったら、誘拐だと疑われるだろう。




そして、小さな机とソファーのあるここに。


さらに、その話題。




「告られてなんかいませんよ」

「マジで?面白くねぇな」



学校とここでの豹変ぶりの方が、よっぽど面白くないんだけど。




「それ、どこから聞いたんですか」

「あ?教室。女子が騒いでた」




それで、教えてもらった訳だ。



ああもう……。




「奈神はさ、誰かと付き合おうなんて思わねぇの?」



女の子同士の恋バナみたいだ。

何でそれを先生なんかと……。



「私を好きな人なんて居ないと思うからです。先生は黙ってそれでも読んでて下さい」



先ほど渡した自分の本を指差し、原稿用紙にペンを走らせる。

家に帰ったら、パソコンに打ち込んで………。





「それ、本当にそう思ってんの?」