何で?
何で息子さんが私の本を?
買ったとかじゃないよね?!
「え、あ…あの、その、本って……まさか、才木、くん買ってないよね?」
「いっ、いや!!買ってないよ!!」
首を横にぶんぶんと振る彼の顔は、熟れすぎたトマトみたいになっている。
「ただ……。父さんの鞄から出てて……。訊いてみたら、そう言っただけ」
「社長が何て言ったの?!」
私の剣幕に驚きながらも、才木くんは丁寧に説明してくれた。
話が長くなったので、簡潔に言ってみると。
・才木くんがお父さんである社長に、この前の中間テストの結果を見せに行った。
・社長が私の名前を見つけ、「自分の会社に居る」と言ってしまった。
・その時酔っていた社長は鞄を落としてしまい、その際に私の本が出てしまった。
・酔っていた社長は、うっかりその本の作者は私だと、息子の才木くんに喋ってしまった。
という訳だ。
社長……!!


