才木くんが何を話すのかは、分からない。
皆は「告白」だの面白がっているが、実はそうじゃないのでは、と思う。
階段を上っていくうちに、着いたのは屋上。
何てベタなんだろう……。
「ごめん、ここしか思いつかなくて」
私が考えていたことを読み取ったかのように、彼は困ったような笑顔をこちらに向けている。
ごめんなさい……!
「奈神さんさ、彼氏とか、居るの……?」
おずおずと訊いてきた彼に、私は自嘲気味に笑って答える。
「ううん。そんな存在、居たことなんて一度も無いよ」
「そっか」
またさっきのように困った顔で笑う彼。
さぁ、ここから何を言い出すか……。
「奈神さんさ」
「うん」
なるべく自然に振舞うこと。
自然に、
自然すぎて不自然なくらいに。
振舞うこと。
「これ……。書いた…の……?」
「は?」
予想外の言葉。
彼は鞄の中から、ピンク色の本を取り出し、私に見せる。
私が見覚えのある、表紙。
3ヶ月前に、出版された本。
「え……?」
何で、才木くんが……?


