摘まれているにも関わらず、平然とした顔で、ニヤリと笑う。
「そういう事言うの、学校出てからにして下さい。誰が聞いてるか分かんないんですから」
早口でそう言うと、右手首を掴まれ、ぐいっと引っ張られる。
そのまま、彼の腕の中に収まってしまった。
「何してんですか?離して下さい。気持ち悪い」
「お前、どういう状況か分かってんだろ?」
つまり、自分の方が優位だと言いたいんですね、この馬鹿。
「分かってますよ。離せ馬鹿」
苛々が募っていく自分とは逆に、彼は愉快そうに笑うばかり。
何が面白いんだ。
ふざけないでよ。
こんな教師、大っ嫌い――。
「俺、奈神みたいな奴、好きかも」


