そのまま廊下へ出ると、私の前をスタスタと歩く。
何も喋らずに、先へ先へと行ってしまう。
歩幅の差に、惨めな気持ちもしたが、私も黙ってついて行く。
「先生、頼み事って何ですか」
私がそう訊いても、彼は「秘密」とだけ答えるばかり。
その響きが妖しくて、また、背筋に悪寒が走った。
誰も居ない、A棟の階段。
身長差がある分、前に立つ彼が、余計に高く見えて仕方がない。
「奈神、お前ここに立ってろ」
「何でですか」
「いいから」
不服だが、立つくらいならと、1つ階段を上る。
両足が揃った瞬間、くるりと振り向かされて、じっと見られる。
何、このシチュエーション……。


