……誰?
「奈神さん、やっぱり知らないのかな?」
そう言いながら、彼は残念そうな顔で、苦笑する。
よくよく見ると、整っていて、綺麗な顔だ。
申し訳ない……!
下を向いて必死に思い出そうとするも、なかなか顔が出てこない。
え?中学の同級生だったとか?
私、覚えている自信がない!
「じゃあ、改めて自己紹介するよ」
動揺を隠せないまま、私は目の前に居る彼を見る。
「才木知紘です。よろしくね」
差し出された右手を見つめ、私もおずおずと左手を差し出す。
「あの…、今日はどうしたんですか?」
こんなに人が集まるなんて、何かあったのだろうか。
「いや、本当は、奈神さんにだけ話したくって。……ここじゃ、出来ないかな」
くるりと見渡せば、ミーハーな女子たちと、恐らく冷やかしに来た男子たち。
「今日の放課後、また来るから」
それだけ言うと、やけに爽やかな笑みを残して、隣のクラスへ入ってしまった。


