「実依先生。今晩は」
予定よりも20分早く着いてしまい、応接室に座っていた。
そんな私に、凛子さんはピシッとスーツを着て、「実依先生」と呼ぶ。
「あっ、“実依先生”より、“メイ先生”の方が良かったですか?」
「いや……もう、何でも良いです……」
こんな風になると、やっぱり寂しくなる。
「先生、私の弟なんですから。でもちょっと遅いわね……」
携帯を取り出し、はぁっと溜め息を一つ吐く。
「あの馬鹿、メールか電話くらいよこしなさいよ」
パタンと携帯を閉じ、髪をかき上げる。
「あの、私が20分も早く着いちゃっただけなんで……」
「実依先生を待たせたらダメでしょ?人間、第一印象がとっても大切なんだし。
時間にルーズだなんて、論外です」
弟さんにも手厳しい……!
弟さんに対する苛々が、こちらにまで伝わってきそう。
早く来て下さいお願いしま……


