希里……!
余計な事を訊かないでよ……!
「ああ、これですか?そうですね……」
奴は右手を撫でながら、私を一瞥し、フッと笑った。
「昨日、飼ってる猫に引っ掻かれたんです。写真撮ろうとしたら、思いっきり」
女子の「えー」だの、「痛そーう」だの、キャーキャーとした声が耳に響く。
飼ってる猫って何?!
私のことか!!
「そうそう。丁度その時の写真が…」
バァン!!!
教科書で机を叩き、奴の言葉を遮る。
「奈神さん?」
「解きますから」
それだけ言うと、前に出て、チョークを取る。
「せんせえ~。写真見たぁ~い」
奴に纏わりつく女子たちの声が尚も響く中、それを妨害するように、カツカツとチョークを鳴らしながら数式を書く。
カラン…、とチョークを置き、自分の席へ戻る。
勿論、数人の女子の痛い痛い視線を浴びる中。
「…正解です。良く出来ました」
私を嘲笑うかのように。
満足気に笑う奴は、
私をまた苛立たせた。


