「実依先生。お疲れ様」
学校から逃げ帰ってきた途中、凛子さんと会った。
「原稿、進んでますか?」
「……まぁ」
凛子さんはにっこりと笑うと、時計をチラリと見る。
「今からどっか食べに行きましょ!」
「え、良いんですか?」
「ちょっと話したい事もあるしね。実依ちゃん、何食べたい?」
“実依先生”ではなく、“実依ちゃん”。
この呼び方は、あくまでもプライベート。
細かい所だけど、きっちり区別をつけてくれるのが、とても嬉しい。
だから、私は凛子さんが好き。
「そういえば、先週美味しいイタリアンのお店、見つけたのよね~!そこ行ってみましょ」
そう言って、私の後ろへ回り、背中を押す。
でも、話したい事って何だろ?


