「そんなに原稿が大事?」
少なくとも、アンタよりはね。
原稿を両手で持ち、じっと睨む。
「何?睨んでんの?可愛いトコあるじゃん」
馬鹿か、こいつは。
無視する事に決めた私は、何も言わず、さっさと帰る準備を始める。
「奈神。帰んの?」
帰るから、先生も出て行ってよ。
「シカト?質問に答えろよ」
これって質問なの。
「なーがーみ」
嗚呼、五月蝿い煩いウルサイ!!
「帰ります。鍵は先生が閉めるんでしょ。さよなら」
ペコリと一礼し、後ろ手でドアを閉め、廊下を走る。
バラされたら、どうしよう。
あいつの事だ、信用出来ない。
……退学届けの書き方でも、練習するか。


