“スキ”を10文字以内で答えよ




いつもの着慣れた制服に袖を通すと、やっと日常に戻ったような気になった。

今日起きたこと全部が、長い夢だったような、不思議な感覚だ。



「希里、もう行けるよ」


上靴を履き、トントンと軽く爪先を鳴らす。

カーテンを勢い良く開け、ちょっとだけ笑ってみせる。



「よし!じゃあ行こうか!皆ね、実依が倒れたって聞いて心配してたんだよ~」

「そうなの?もう大丈夫だし、はしゃいでも平気」

「良かった!あ、明日の夜打ち上げあるからちゃんと来てよね?」

「分かった」



打ち上げ、か。


なら早めに原稿を切り上げてから、そのまま打ち上げに直行しないと。



「実依?」

「えっ?ああ、行く行く」



ぼんやりしていたのか、希里に訝しげな顔をされる。
「大丈夫だから」と何度も言って、曖昧に笑うと、希里に手を掴まれる。




早足になっても、何となくぼうっとしているようだ。

先生とのことも、何だか全部夢だったような、そんな気分。


本当に夢だったりして。


間接キス程度で何を照れているんだろう、私は。




「馬鹿みたい」

「え?実依何か言った?」

「ううん、何も」



明日会う時は、ちょっとだけ可愛い格好してみようかな。

「この後打ち上げですから」って言えば、不自然じゃないよね?



そんなことを考えながら、手を引かれ、教室に辿り着く。



パァンッと乾いたクラッカー音で、一旦考えるのを中止。


文化祭、無事に終わって良かった。