アイスを食べながら、先生をじっと見つめる。
悔しいけど、カッコいい。
1枚だけでいいから、写真を撮りたい。
携帯で写真を撮ろうと、ポケットに手を入れても、指が布に触れるだけ。
制服と一緒に置いてきたんだった。
仕方がない。
この贅沢な状況を、気が済むまで堪能しよう。
黙々とアイスを食べていると、やたら視線が気になった。
「どうかしたんですか?」
「いや……。お前のその格好、メイク取ったら普通に可愛いじゃん」
は……?
可愛い?
「な、何言ってるんですか先生?!こんな格好ですよ!ゴスロリとか似合わないです!」
「また照れてる」
「……っ、いきなりそんなこと言われたからです」
「可愛い」
「五月蝿い」
カップを持っている手が熱くなって、アイスが溶けるスピードが速くなる。
まだあまり食べていないのに。
「アイス溶けてるぞ」
「言われなくても分かってます。先生も食べますか?」
私ばかりからかわれているから、少しだけからかってみる。
こんなの、普通だったら言えないけど。
「なんて、冗談ですけど、ねっ?!」
私の手ごと掴んで、パクリとアイスを一口。
すぐに離れた先生の唇が、やけに艶めかしく映った。
「……これぐらいで照れてんじゃねーよ。もっと恥ずかしいこと、書いてるくせに」
それだけ言うと、私の前髪をわしゃわしゃと乱し、保健室から出て行った。
食べるべきなのかどうか迷っているうちに、アイスはどんどん溶けていく。
こんなことされたら、期待するじゃない。
もっと近付いてもいいのか、もっと親密になっていいのか。
先生は、やっぱりずるい。


