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その後の記憶は、全く無い。
目が覚めたら、保健室の真っ白なベッドに横たわっていた。
身体を起こしてみると、頭が軽かった。
斧は無い。
頬にぺたりと手を載せてみれば、メイクも取られていた。
ベッド脇の机に、2リットルのスポーツ飲料と、紙コップが置いてある。
これ、飲んでいいのかな。
「……いただきます」
誰も居ないのか、私の声だけ虚しく響く。
遠くの方で、後夜祭の準備をしている音が聴こえる。
時計を見ると、針は5時を指していた。
2リットルのペットボトルは重たく、落としてしまいそうだ。
どうにかしてこれを飲まないと。
一度ベッドで伸びをし、身体を動かしてみる。
うん、多分大丈夫だ。
またスポーツ飲料に手を伸ばすと、ドアがガラリと開いた音がした。
保健室の先生かな?
何かお小言を言われるのは嫌だなあ。
カツカツとこちらに向かってくる靴音が鳴り止むと同時に、保健室に似つかわしくない、執事の格好をした先生が立った。
「……先生?」
「おお、目ぇ覚めたか」
「はい。もう、大丈夫なんですけど……」
「大丈夫だけど?」
「それ、注いでくれませんか?」


