目は開いている。
ぼやけた視界のなか、誰かが入って来た。
「実依……?!え、ちょっと、やだ!!大丈夫?ごめん!誰か……誰か来てー!!実依ごめんね、ごめんね!」
ああ、希里か……。
そんなに謝らなくていいのに。
「大丈夫」って言いたいのに、声さえ出ない。
いつもより冷静だけど、変なの。
希里がこの格好の私を担ぐのは無理よね。
立たなきゃ……。
「橘さん?」
「先生……っ!実依が倒れちゃって……。どうしよう……」
担任が来たのかな?
そういえば今日一度も見ていないけど。
「落ち着いてください」と希里を宥める声が、先生に似ている。
こんな時まで先生、か……。
好きなのかな、私。
「奈神さん、ちょっといいですか?」
は?
ぼやけた視界が、ぐるんと潤む。
先生……。
こんな時に来ないでよ。
かっこ悪い……。


