***
「……また来て下さいね」
キャーと耳をつんざくような悲鳴。
これで何回目だろうか。
お化け屋敷というものの趣旨に沿っているとは思うものの、人が来る度に叫び声を上げられるのは、ちょっとメンタルにくる。
「希里ー……。今何時?あと何人くらいでおしまい?」
小声だからか、ちっとも希里の声は聴こえない。
まだお客さんがいっぱい居るから、来れないのかな。
フリルのたくさん付いたゴスロリが、今になって暑く感じるようになってきた。
暗幕で教室を覆っているから、空気がこもっている。
ちょっとだけ、休憩できないかな……。
真っ暗ななか、ペットボトルに入ったお茶を探す。
ああ、もう。
全然見えないじゃない。
ゴツン、と机の角でお腹を強打。
「うぅ……っ、痛……」
机の上には何も無く、水分補給できるような物は一切無い。
頭に被った斧がやけに重たく感じる。
暑いし、重たいし、喉渇いたし。
何となく頭が痛くなってきたかも。
いやいや、ここで迷惑かけたらダメ。
もうすぐ終わるんだし、我慢、我慢。
あ、やっぱりお茶ぐらい飲みたい……。
プツン、と糸が切れたように、身体に力が入らなくなる。
ダメだって。
でも、もう、無理……。


