メイクをとったからか、何度も写真を撮られた。
お化け屋敷に入った時に叫び声を何度も聞かされたが、それよりはましかなと、人当たりの良い笑顔を向けて写った。
小さな子供には「可愛いドレス」だと言われ、少し気分が良かった。
「怖くないの?」とおどおどと訊いてきた女の子に、最初どんな顔をすれば良いのか分からなかったが、「大丈夫だよ。来てね」と言えてホッとした。
30分くらいうろうろしていたところ、やたらキャーキャーと金切り声が聴こえてきたから、少し覗いてみた。
邪魔にならないよう看板を持ち、そちらを見ると、メイド服の女子高生に囲まれた先生が突っ立っていた。
先生は燕尾服に眼鏡という、執事のテンプレートのような格好。
本人の前では言いたくないけれど、とても似合っている。
女子高生に埋め尽くされたなか、一人仮面のような甘いマスクを被っている先生を見ると、大変だなと思うと同時に、何だか苛々してきた。
私の前ではあんな顔しないのに。
別にいいけど。
一瞬こちらを向いたような気もしたが、私が居るとは先生も思っていないだろう。
そろそろ教室に戻ろうと、また看板を両手で持ってその場を後にした。


