「じゃあこの立て札持って回って来てね!この格好だったら怖がられないから大丈夫だし!」
のんびりと食べる暇も無く、腹八分目になったところで動き始める。
希里はやたらクオリティの高い立て札を押し付け、私の机周りを片付けた。
「じゃあ行って来るね」
「あ、ちょっと待って。写真撮ろうよ」
「さっきも撮ったじゃん」
「メイク取った実依とは撮ってない。はいこっち向いて」
パシャッと今日一日で聴き慣れたシャッターの軽い音と、一瞬の光。
ちゃんと笑えているか、少し不安だ。
「うん。ほら、ちゃんと撮れたでしょ?」
スイスイと指を動かし、私に画面を見せる。
私の写真にしては、わざとらしい笑顔じゃない。
結構良いじゃない。
「ほんとだ。ありがとね」
「珍しい。後で送っとくから!」
「よろしく」と笑ってみせ、そのまま廊下に出た。
あれは彼女なりの気遣いなのだろうか。
そんなに仏頂面だったのかな。気を付けないと。
頬をパチンと叩く。
「午後1時からお化け屋敷再開しまーす!」
久しぶりに出した大声。
震えていて、ちょっと可笑しかった。


