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そして当日。
メイクに自信があると自負した希里に連れて行かれ、誰も来ない生物準備室でメイク。
「全部真っ赤に塗るんだから意味ないんじゃない?」と言ったら、「黙ってて」と言われてしまった。
絵具の匂いにうんざりしつつも、今日で終わりと自分に言い聞かせる。
目元と口元は綺麗にしてもらったらしい。
鏡は強請っても、「絶対ダメ」と頑なに拒否された。
髪を巻いてからのツインテール。
そして斧。
頭がずっしり重くなった時点で、私が鏡を見る気が失せた。
「でーきたっと!あ、鏡見る?実依、お人形さんみたいに綺麗だよ!」
「え、あ、うん。ありがとね……」
「でもやっぱり顔の血の方に目が行くね」
出来れば見たくないけれど、仕方がない。
そっと見てみると、予想していたよりも酷い自分の顔が映し出された。
「死にたくなる……」
「ダメダメ!実依今日だけの我慢だから!」
「分かってるけど……それでも……」
泣きだしそうになるのを抑えながら、希里の無情なシャッター音に黙って耐えた。


