「はい!」と笑顔で渡されたのを拒むなんて、そんな非情なことは出来なかった。
どうやって着るのか分からないゴスロリに、8分ほどてこずった。
最後の方は「実依遅い!」と希里に怒られながら、リボンやら飾りなのか縛る用なのか分からない紐やらを結ぶのを手伝ってもらった。
最後はヘッドドレスではなく、斧。
頭に突き刺さった状態にしたいから、当日は斧プラス顔の左半分を真っ赤に塗られる。
「帰りたい……」
カーテンを開け、皆からキャアキャア言われる。
「可愛い」とか「似合ってる」とか言われても、ちっとも嬉しくない。
「え……。ああ、うん、ありがと……」
無数にも聴こえるシャッター音に、茫然としながら、ふわふわのレースを睨みつけた。


