ひんやりと、心地よい風が肌を触る。
サラリ、サラリと吹かれた葉が大きな影を作っている。
「暑い……」
その中で私ただ一人、大荷物を持って立ちすくんでいた。
***
何度呼びかけてみても、「塾だから」、「部活だから」の一点張りで、結局今日も教室に残った8人で、看板やら衣装やらを分担して作っている。
出し物はお化け屋敷。
人気と云えば人気だけど、教室割のくじ引きではずれ、一番人気のない旧校舎の音楽室となった。
それを言い渡した途端、クラス内のブーイング。
笹野さんはオロオロと慌てふためき、私と希里だけが残った教室で一人泣いてしまった。
彼女を見て不憫に思った数人が、手伝ってくれたのだ。
***
手伝ってくれている数人のおかげで、作業は少しずつ進んでいる。
足りない材料を買ってくるのは、主に私だ。
笹野さんの悲しい声が響いた蒸し暑い教室を出た後、商店街、ホームセンターを回った。
両手にはガムテープやベニヤ板が何個も入った袋を下げ、小脇に5枚の段ボール。
よたよたと歩く私を通りすがりの人の視線が刺していく。
段ボールを3回落とし、大きな溜め息を吐く。
もう嫌。
何で買出しなんか引き受けちゃったんだろう。
ああ、そうか。
私裁縫が出来ないからか。
じゃあ仕方ないと自ら引き受けたんだった。
「仕方ないかあー……」
段ボールを拾ったのと同時に、大きな日傘の影が広がった。
見上げると、懐かしい香りが鼻をくすぐる。
「実依ちゃん?」
あ……。
「由美子さん……」
ふくふくと柔らかな雰囲気の目の前の女性は、私の叔母さんの由美子さん。
つまり、校長の奥さんだ。


