ただでさえ甘い真ん丸の苺キャンディには、砂糖の粒が振りかけてある。

ただひたすらに甘い飴ちゃんよりはガム派なので、

「甘過ぎるくない? 砂糖の塊に砂糖を塗すとか……ありえん」と言って、

洋平はわざと鼻の穴を広げ変な顔をしてみせた。


「うわ、やだ、ぶりっ子じゃないし! ナシ、忘れて」

唇に人差し指と中指を添えて下を向く仕草さえ いちいちときめいてしまう。


そう、付き合う前から薄々と勘付いていたが、

彼女の結衣はぶりっ子に振る舞うことが不慣れならしい。

決して本人から聞いてはいないが、照れ隠しにガサツにふざける感じが幼いと洋平は気付いていた。

とは言え、計算をしない訳ではなく、たまにわざと可憐な小技を出してみせる。

しかし、たいてい可愛い子ぶった後は『はい狙ってみた』と、即効でごまかすから、

それさえ可愛いと思うポイントになる。

(世間ではぶりっ子オンナは嫌われるが、誰だって好きな人の前ではよく見せたいだろうから、

彼氏の前でのみなら自分は逆に可愛いと思う。容認派だ)


「あはは、顔おかしい、ウケる」

このように、クラスメートをはじめ女子高生は二言目にはウケると口にする。

非常に面白い特徴だと思う。
(ただ笑いのツボが浅いので、洋平の彼女はウケるを乱発するのだけれど)


田上結衣という人間が近藤洋平のツボだったようで……そんな彼女に彼が屈託なく笑い、

その彼の笑顔に逆に彼女が胸を弾ませ微笑み、今度は彼が――……と、

見事に連鎖することがバカップルだなんて、本人たちは気付いていないのかもしれない。

人はそれをイタいと言うのに。