……なんて嘘。

ピュアではない洋平が、綺麗にまとめることは不可能だ。

たかが恋愛、彼女をフューチャーし過ぎて真剣さに欠ける。

十六年間溜まっていた家族のことを、出会って一年未満の子がどうしたっていう?

こうやって気軽にオレたち純愛で最強なんだと語るから、大人たちに浅いと失笑されるのだろう。

さっきみたいに二人の恋愛を優美に唱えると、洋平に限りどうも安っぽく、

せっかくの恋心が、もったいない〆になるではないか。


結衣が居るから自分が変われた――彼女の存在? 家族? 未来?

はて。カジュアルに人生を公言し過ぎて、やはり薄っぺらい。


だが、ここは『スッピン眉ないし』『公園でオールした』が、口癖だった淡い頃を思い出してみよう。

たかが恋愛に夢中になることも高校生らしくて貴重だと洋平は思う。

今しか感じられないことがあり、今しかできないことがある。


だから田上結衣、こいつを女神に認定しよう。
なんなら天使、お姫様でも良い。

家族について長年苦しんでいた主人公を、一過性になるかもしれない彼女が明るい夢に導く――素晴らしい。

学生の恋愛はミラクルだから、どんな問題でもマルチに解決するらしい。

お粗末さが愉快だ。笑顔がある関係は――……?


ほら、チープな幸せを作るのは多分ブラックユーモア。


お花畑の国の王子様は、ちょっと可愛い程度の顔面をしたお姫様を絶世の美女と崇め、

なんでも自分たちは永遠だとか、自分たちの愛は不滅だとか一人で語るものですから、

呪いにかけられたのかと心配されておりましたが、どうやら素面なようだった為、

国民から『痛い王子様』とか『ナルシスト王子』とか愛称で呼ばれ、

いじられキャラとして、皆に慕われ幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。


これこそ完璧なシナリオ、常にハッピーエンド。
ぜひ絵本にしよう。
将来子供によみきかせしよう。


バレンタインデーに告白をされて、ホワイトデーに付き合って、七夕の夜にファーストキス。

なかなかドラマチックじゃないか。
とりあえず幸せ、自分たちの愛はフォーエバーでデステニーだから。片仮名はオシャレ。


〓門限9時の領収書
〓おわりに