「知らなかったよ」
意外だった。
お母さんは自分の若い頃の話をほとんどしたことがないから。
「お母さんの憧れの仕事だったんだよ。
……ねえ看護師さん、お仕事をしていて嬉しい時ってどんな時?」
看護師さんは少し考えてから、あたしとお母さんを交互に見つめて話してくれた。
「一番嬉しいのは、やっぱり患者さんが元気になってくれた時ね。
ここは整形外科病棟だから、星沢さんのように事故やけがで入院してくる人が多いの。
救急車で運ばれてくるような大けがを負った患者さんが、それに負けないでリハビリしている姿を見たら、頑張ってっていつも応援しちゃう。
だんだん元気になって、歩けるようになって退院する時は、嬉しくて泣きそうになったりもするよ。
患者さんはもちろん、ご家族も一緒に頑張ったのを見ているから、患者さんがパジャマから洋服姿になることが、本当に嬉しいの。
大変だけど、その姿を見たらそんなの吹っ飛んじゃうよ」



