「お母さんはおそらく、そんなにひどい怪我じゃないよ。
命に別状はないって言ってたから、きちんと治療すればきっと元気になるよ。
お金の事も心配いらない。
横断歩道を渡っていたお母さんに気付かなかった車が悪いから、治療にかかる費用は当然全額加害者側の保険から出るし、休業補償や慰謝料だってもらえる。
だから、芹香ちゃんは安心して勉強に励むんだよ。
お母さんはこれからしばらく入院することになるだろうけれど、病院にいる方が安心だからね」
あたしは、静かに頷いた。
やっと呼ばれて、お母さんの顔を見られた時にはもう、外は明るくなっていた。
沢山の機械や管につながれているけれど、お母さんの顔は綺麗なままだった。
あたしの顔を見て、お母さんが言った。
「ごめんね、芹香、お母さん、しばらく帰れないの」
こんな状態でもあたしの心配をしているお母さんを見て、あたしはまた泣いた。



