迎えに来てくれたタクシーで病院へ。
マスターも紙袋を持っていて、中にはティッシュペーパーや割り箸、マグカップなどが入っていた。
お母さんのために、きっとマスターも慌てて準備してくれたんだ……。
夜間救急専用の入口から中へ入り、守衛さんにどこへ行けばいいのか尋ねる。
言われた場所へ急いで行ったけれど、まだ処置が続いていてお母さんには会えなかった。
じっと待っているのは辛い。
悪いことばかり考えてしまう。
そういえばお母さんは今日、黒いコートを着ていたっけ。
あたしのお気に入りの白いファーコートを着て欲しいってお願いすれば良かった。
あれだったら、夜でも目立ったのに。
もしあれを着ていたら、事故に遭わずに済んだかも知れないのに。
浮かれていたあたしは、そんなことこれっぽっちも考えてなかった。
時間が戻るなら、出勤前のあの時に戻してほしい。
白いファーコートを着るようにお願いして『気を付けてね』って声をかければ良かったよ……。



