天使未満。


手でほっぺをごしごしするあたしを見て、お母さんが笑った。


「あはは、赤くなっちゃったわ。

ちょっと前まではよくこうやってちゅーしてたのに、いつの間にかお母さんより大きくなっちゃって。

いくら大きくなっても、芹香はお母さんの宝物に変わりないけどね」


お母さんはよく、あたしが小さい頃そう言ってたっけ。

『芹香はお母さんの宝物』って。

そうだよね、あたしにとってもお母さんは宝物だもん。

誰が何と言おうと、お母さんは頑張ってるってあたしが認めてるから。

学校で色々言われたこと、お母さんには絶対に内緒にしようと思った。

お母さんは知らなくていい。

どうせあと少しでバイバイするクラスメイトからの悪口なんて。

それより……。