天使未満。


廊下に出て、コートとマフラーをロッカーから外した。

マフラーを巻くふりをして、こっそりまぶたを押さえる。

大丈夫、誰にもバレてないはず。


「芹香、帰ろう!」


「うん!」


よし、ちゃんと笑って返事ができる。

いつものように、近くに住む飛鳥と二人で帰る。


「ねえ、何か言われてたでしょ?」


離れた席にいる飛鳥にもわかっちゃったのか……。


「うん、まあね。

土曜塾のこと話したら、色々と、ね」


あの時聞こえてきた話の内容を、飛鳥に話した。


「そうなんだ……。

うちだって父子家庭だけど、その家によっていろんな事情があるし、子どものせいじゃないのにね」