天使未満。


全員に順位表を渡し終わった先生が、日直に声を掛けていた。

もうすぐ、帰れる。

あと少しで、ここから出られる。


あたしは泣かない。

絶対に泣くもんか。

あたしが頑張った結果、成績が上がったんだもの。

みんなはそれが羨ましいだけ。

母子家庭だから、何?

お母さんは、たった一人で頑張ってあたしを育ててくれてるんだよ。

みんなが言う、普通の家だと二人ですることを、一人でこなしてるんだから。

母子家庭をバカにするな!

お父さんがいなくたって、ちゃんと頑張っているお母さんを、あたしを、バカにするな!


泣かない、泣きたくない。


日直の号令でのそのそと立ち上がり、礼をした時。

床にぽたりと雫が落ちた。

あたしは慌てて、上靴でそれを踏みつぶした……。