「そりゃあもう、ぎゃふんと言わせちゃいますからねっ!
帰って勉強します! さよならっ!」
トートバッグを担いで、急いで講義室から出る。
さっきと同じように階段を駆け降りていたら、後ろから追ってくる誰かの足音。
あたしの方が先に降りてるから負けるはずないのに。
「お先っ!」
渡辺先生、三段飛ばしの猛スピードで降りてきた。
あの巨体なのに、なんという素早い動き!
あっという間にあたしを追い抜き、一番下で待っている。
「頑張れ! 可愛い女子高生になれるように期待してるから!
これやるよ。じゃあまた来週」
いきなりあたしに向かって、何かを投げてきた。
ホットココアの缶、だった。
わざわざあたしにこれをくれるために、追いかけてきてくれたのかな?
あったかい、な……。



