お母さんが、飛鳥のお父さんにお礼を言っている。
飛鳥のお父さんが、あたしのことを『いい子ですね』って褒めてくれてるのが聴こえる。
ただ、それだけなのに。
何となくあたしは、そこへ行けないような、行ってはダメなんじゃないかっていう気がした。
何だろう、この感じ。
まだお母さんには気づかれていない今のうちに、引き返そうかと思ったのに。
「あら、久しぶりね。
やっとお見舞いに来られるようになったんだ!」
いつもの看護師さんに見つかってしまった。
「あ、こんにちは……」
「星沢さん、娘さんが来てくれましたよ~」
逃げられなくなってしまった。



