天使未満。


それだけでもう、嬉しくて泣きそうだった。

ちゃんとお礼も言えないまま別れてしまって、もう二度と会えないと思ったから。


「渡辺先生……わざわざ、来てくれたんですか?」


ああもうっ!

せっかく感動の再会なのに、あたしはかすれた可愛げのない声しか出せないなんて。

口元に手を当てて、咳払いしようとした時。

握っていた【うさぎのしっぽ】を、うっかり落としそうになった。


「あっ!」


地面に落ちる寸前、大きな手が勢いよく伸びて、キャッチした。

それからまたこの間と同じように、あたしの手にふわふわを握らせてくれた。

渡辺先生の大きな両手が、あたしの小さな片手をそっと包み込む。