母さんにまた明日も来るからと 言い残して病院を出た。 一人になるとまた涙が込み上げてきた。 泣いてちゃ駄目だと顔をあげた俺は 自分の目を疑った。 —親父と知らない女が腕を組んでいる。 「え…ちょ…なんで?」 見間違いだと涙を拭って前を見ると やはり目の前に居たのは親父だった。 頭が真っ白になって目眩がした。 親父は女と笑顔で話しながら タクシーに乗り込む。 その後どうやって家に帰ったか 全く憶えていない。 …結局その日、親父は帰ってこなかった。 「親父なんて、信じない。」