「じゃぁ、頼んだぞ。」

俺は、それだけ言うと、
だまったまま歩みをすすめた。

沙南は、
まだ何か言いたそうだったけど、
俺が視線をそらしたら黙ってしまった。

ふいに沙南の肩が俺の腕に触れた。

ほんのちょっとだけ触れただけなのに、
触れたところから
沙南のぬくもりを感じた。

あたたかい、
心地いい気持ちが心を満たす。

ほんのちょっとしたことなのに、
気持ちが高ぶる。

俺、ホントに最近ヘンかもしれない。

沙南は、
ちょっとうつむき加減で
だまって歩いていた。

俺もだまって歩いた。

月に照らされた
二人のシルエットが重なる。

俺は、
二人の影だけでもくっつけていたくて、
触れた沙南の肩をずっと感じていたくて、
何気に沙南に近づいた。

沙南も嫌がる様子はない。