通りすぎたギャルの一人が、

「それ貸してよ! いいな、神原だけ~」

って言ってる。

「キャー、やめて! アタシの宝物なんだからっ」

振りむくと、神原さんは取られないように、必死でキャップを手で押さえていた。




「うるさ~。騒ぐなっつの」

レナが、うざったそうにギャルに毒吐いてる。

「レナ、そんな言い方しなくっても……」

「なんかムカつく~。だってさ、あの帽子って。絹川くんが昨日かぶってたヤツだよね?

サイテーだよね、彼女じゃないコに私物貸すって」

うわ……。

レナも気付いてたんだ。



「わ……わかんない。なにか事情があるのかも」

「事情ねぇ……。そういえば、広間出た時、ヤるとかそんな話題出してたよね。

さやの知らない所で、あのふたりホントにヤってたりして~!」




――バチッ!!

レナがあんまり嬉しそうに言うもんだから、

気が付いたら……

手が出てしまっていた。