「当麻くんっ……」

引き止めようとしたけど、そこで言葉が詰まる。

だって……当麻くんの顔に、さっきみたいな優しい笑顔はなくって……。

「明日もう……会えなくなるとか、考えたコトあるか?」

「会えなくなる?」

「そ。オレが今こうしてる間にも、爺さんポックリ逝ってるかもしんねぇ」




口調は冗談っぽいけど、当麻くんは全く笑ってない。

「そんな……考えたコトないよ。っていうか、そんなの考えちゃダメだよ!」

「だろ? フツーは考えねぇよな。けどさ、身内に病人がいるってそーいうコト。

考えたくなくっても、ふとした時に不安になる」

「うん。さっきはゴメン……」




「まぁ、そーいう言葉が簡単に出てくる分、さやは幸せな環境にいるっつーコト」

「…………」

「気にすんな? 別に怒ってねぇから。……けど、あぁいうコトは言わないで欲しかった」

当麻くん……。

ゴメンなさい。



言葉に詰まってうつむいてると、

「一緒に出ると誰かにチクられてもヤバイから、先行くな」

って言って、

当麻くんは先に非常扉を開けて、ろう下へと出ていった。

残された私は……

しばらくそこから動けなかった。