「こんにちは」

ふいに訪れたその声は、
頭の中を彷徨うぼくの意識に
そっと手を差し伸べた。

病室のベッドを囲む
カーテンの向こう側に、
うっすらとした影が見える。

礼儀正しく落ち着いた雰囲気の声、
間違いない。

「委員長?」

ぼくは語尾を上げて、
尋ねるように呟いた。

「カーテン開けていい?」

「うん」

学生カバンを持った白い手が、
ベッドのカーテンを
丁寧に開いていく。

そこには、
小さなブーケを胸に抱いた、
制服姿の委員長が立っていた。

真面目で頭が良くて、
誰にでも親切で整った顔立ち。

クラスの委員長を務めるこの人を、
ぼくは名前で呼ばずに、
ただ委員長とだけ呼んでいた。

クラスだけでなく、
学校中の男子が憧れる優しい女の子だ。