部屋のテレビをつけて、冷蔵庫からビールを取り出す

家に帰ってきたと同時に襲ってきた疲労感にため息をついて、ケータイを机にことんと置く


ったく、冬だってのになんで変質者なんだ

つかあの女、外で暴れたりしねーだろーな…


ちょっと外に耳を澄ましたけど、特に物音もしなくて胸をなでおろした

部屋着に着替えると、コンビニで買ってきた弁当にがっつく

「げ」

思わず小さく声をあげた

テレビからきこえてくるクリスマスソングメドレーを聴いて、今日がクリスマスイブだということに気づくなんて…


学生の頃よく聴いた懐かしいクリスマスソングが流れてくる

それを口ずさみながら

弁当を食べながら

ケータイチェック


「くしゃん!!」


ん?

俺今くしゃみしたか???

いや、してねえな

ビールを飲んで、一瞬で食べ終わった弁当を流し込むと立ち上がって迷うことなく玄関へと向かう


ドアをあけると、こちらを見てたっているさっきの女

黒いコートに黒いブーツ

しなやかそうに均整のとれた体を一瞬で認識した


困って頭をぼりぼりかきつつ…

「何の用っすか?」

ときくと、やっぱり八重歯をちらつかせて微笑みながら「寒いから、入れて」と一歩寄ってきた

かすかに風が起きて、彼女の匂いが俺の鼻元をすぎていく


なんだかものすごく親しみのある

それでいてちょっとほこりっぽい匂いがした