ある日、僕はあまりの下手さに居残り練習をさせられることになった。


かなり面倒だったけど、先生が特別に学校一歌の上手い子をわざわざ呼んだというから、

サボったりしたら、先生にも、その呼ばれた子にも申し訳なくて顔を合わせられない。


だから仕方なく、居残りをしようと決めた。



静かな音楽室に入ると、歌姫を思い出す。

歌姫みたいに歌えるような気がして、つい歌い出してしまった。


「確かに、お世辞にも上手いとは言えないけど、綺麗な声を持ってるのね」

突然、楽器がおいてある倉庫室の方から声がした。


思わず聞き惚れるような、澄んだソプラノの声。



……………歌姫だ…。