女の人は眉間にしわを寄せて、私をジロジロと睨むように見た。


怖くて思わず1歩下がる。


「ねぇ、スズ君ってば。

なんなのこの子」


「え?この子?」


にっこり笑って、ちょこんと首を傾げる彼。


「彼女やで」


ピタリと女の人の動きが止まる、もちろん私の動きも。


え……今なんて……?


バクバクと壊れたように動き出した心臓を押さえながら彼を見上げれば、ニコッと微笑みが返ってきた。


「……なんてな」


急激に上がった体温が、一気に冷める。


彼がケタケタ笑えば、女の人は「冗談きつーい」と一緒になってバカみたいに笑った。


……もう、やだ。


くるりと2人に背を向けて帰ろうとしたら、ぐっと肩を掴まれた。


「どこ行くん?」

「も……帰る」


込み上げる涙を堪えながらそう言えば、頭の上からくつくつと笑い声が聞こえる。


どこまで最低なんだろ、この人。


「アカンよ、勝手に帰ったら」


肩に掛けられた手がグンと私の身体を引っ張った。


抱き寄せられれば、再び心臓が激しく脈打ち始める。


「ごめんな」


私の肩を抱いたまま女の人に向き直った彼は、申し訳ないなんて全然思ってないような口調で謝った。


「今日はこの子と約束しててん。

キミとはまた今度遊んだるさかい、堪忍」