メルト・イリュージョン



限りなく、怪しい。


だけど、ここで鍵を破って確かめている時間は……

シャワーを浴びていると思わせて不審がられないのは、せいぜい10分くらいだ。


手元にピッキングの道具はないし、派手な音を出すとすぐにバレてしまう。


わずかな時間、私は逡巡して、とりあえずシャワーを浴びる事に決めた。

短時間でシャワーを切り上げて、残った時間でどうするか決めよう。そうすれば、シャワーを浴びた事実は残るし、焦らずに対処法を考える事が出来る。

あわよくば、リフレッシュしている間に、何か妙案が浮かべば良いのだけれど……


ホットパンツのポケットから、メタリックレッドの携帯を取り出して、ドレッサーの上に置く。

本部への連絡は、一日おきと決められているので、また明日連絡すればいい。


羽織っていた暑苦しいブルゾンを脱ぎ捨て、ノースリーブのインナーに手をかけた。

裾を胸元まで捲り上げた鏡の中の自分と、目が合う。