磨き上げられた鏡面に映った自分の姿に、一瞬ドキリとする。
試しに、二つついている引き出しの内、一つを開けてみた。
中には、マニキュアやマスカラと言った、女性のメイク道具が散乱していた。
どうやら、つい最近まで使われていたらしい。
「……問題は…」
チラリと、視線だけを横の引き出しに移す。
右下に小さな丸い穴が空いていた。鍵穴だ。
急ごしらえの脱衣所に置かれた、使われないドレッサー。
彼の性格を考えると、不必要なものを処分せずに残しておく行為は、特別おかしな事でもないのだけれど……
『中に、何が入ってるか知りたい?』
それでも、頭に浮かんできたある一つの仮説に、何故か私は根拠のない確信を感じていた。
彼の指輪にあった小さな鍵穴と、この引き出しについている大きな鍵穴。
二つの物が同時に重なり合って、それで初めて一つものとして完成するのではないだろうか?
相互作用だか、相関関係の法則だか──何だか、それっぽい事を言っていた学者がいた気がする。



